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おためごかし、又(その5)

それにしても、こうやって文章を綴るのも楽ではない。
書きたい話が湧いてくると話が広がって収拾がつかなくなる。あるいは「この話、以前に書いていないか」と心配になることがままある。同じ相手に同じ話を二度するのは、同じ話を二度聞かされるよりつらい。同じ相手に再度話していることを知りつつ、相手が初めて聞かされた反応を示せば「まえの話は印象が薄かったんだ」とがっかりするし、「その話、まえにも聞いた」と言われれば、話題の貧しさを指摘されたようで、その場を立ち去りたい衝動に駆られる。
そこで話のネタを見つけようと苦心するのだが、探して得た情報ほどつまらないものはない。「おや?これは!」と眼にとまった話題から聞かせたい話が膨らんでくるのだ。

『オーソン・ウェルズ劇場』で観たエピソード(題名は忘れた)を紹介しよう。
ある田舎町にひとりのルポライターがやってきた。今まで事件らしい事件など一度も起きたことのない町で殺人事件が起きたら住民はどのような反応を示すか?、ということを取材する目的なのだ。ルポ屋は自ら殺人犯を装う。わざと秘密ありげな態度をとり、(動物かなにかの)血のついた衣類とナイフを詰め込んだ鞄を川に投げ捨てたりする。町の人が「あいつは人殺しだ」と噂しだした。
しめた!
ルポ屋は思いの通りの運びにほくそえむ。町の連中が騒いでも肝心の被害者がいないのだからこちらは平然と事の成り行きを記事にすればよい。こりゃ、売れる!
だが彼は町の自警団を甘く見ていた。
被害者が確認されてなかろうと、真相がどうであろうと関係ない。
「人殺しのよそ者を許すな!」
保安官や一部の冷静な住民の制止も利かず、自警団はルポ屋をリンチ(吊るし首)にかけてしまうのであった・・・

案内役のオーソン・ウェルズは終りに「悲しい話です。では次回。」と、簡単に片付けていた。おそらく彼は視聴者に「愚かな話だ」と言わせたかったに違いない。愚かなのはルポ屋もそうだが、自警団の狂信そのものであることは言うまでもない。感情的にひとつの意見に傾けば閉鎖的な田舎町は独立国家となり、ひとつにまとめられた考え方が正義となる。

「一山当てよう」とネタさがしに躍起になってると、とんだ落とし穴があるもの・・・
自分自身が話のたねになりかねない。
ご用心、ご要慎。


この稿つづく


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