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『日本の青春』覚書

小林正樹監督作『日本の青春』を観た。
発見、発見、また発見の傑作だ。

発見;その1
主役の藤田まことは製作された昭和43年の時点で‟中村主水”のキャラができている。
主人公は40代半ばの初老の事なかれ主義者で、家に帰ると女房に疎まれ小言に耐えるだけのしょぼくれ親父なのだ。だが息子が進路に行き詰まり防衛大も考慮に入れているときくと頑固に反対する。この二面性は!

発見;その2
奈良岡朋子の擦れた妻の演技と風貌が中嶋朋子そっくり!
いや、中嶋朋子が奈良岡朋子に似せてきているのかもしれない。『北の国から』で不倫をする蛍役からそっちのキャラになってきていたっけ・・・

発見;その3
防衛大の教官役に菅貫太郎が!
スマートでカッコいいんだな、これが。
『異邦人の河』(1975)での在日朝鮮人役も素晴らしかったが、この人『十三人の刺客』の残虐非道のバカ殿の演技が受けて時代劇でそっちのキャラを演じさせられすぎた。惜しい。しかも六十そこそこでバイクにはねられて死んでしまって、これまた惜しい。

発見;その4
三島雅夫がナレーション
これまた珍しい。東映の時代劇のイメージが鮮烈だが役どころは広い。『ゆうれい船』では50歳にして13歳くらいの孤児を演じていた!こうした強引な配役をやってのけたればこそ当時の映画産業は元気だったのだ。つじつま合わせをしていたら創作意欲が鈍する。
そう、そう、ナレーションの件だが、鬱陶しくて、要らないね。 それでもナレーションを入れたのは小林正樹がよほど訴えたかったのだろう。この小市民の生活こそが一歩も譲れない戦いなのだと。


主人公は聴覚に障害がある。なぜだろう?
映画は過去を語る。この男にも青春があった。そして戦争に取られる。そこで耳を悪くしたのだろうか?
応召前夜、男は空襲を利用して自己消滅を謀ると恋人に告げる。
現代。未亡人になった恋人に再会して恋心が再燃する男。その女に言い寄る武器商人は、軍隊でひどい制裁を加え男の耳を潰した上官だ。
おや? 徴兵忌避の計画はどうなったんだ?

ラスト近くでこの謎と、物語のテーマが明かされる。このくだり、ミステリードラマのよう。

男は女と逃避行を謀る。
だが出来ない。あの時と同じように。
「自分だけが逃げるわけにはゆかない」
男には家庭を守る義務があった。小さな幸福を守り抜く義務が。
男の戦争は形を変えて今も続いている・・・

『日本の青春』
リリシズム溢れる武満徹の音楽に浸り、新珠三千代に女の性を見、1968年の時代の息吹が現在の私たちを撃ってくる。
しょぼくれた初老の男の背中に、戦いを続ける‟青春”がある。
お金を払って観る快感を味わえる傑作だ。


覚書
2017年2月6日 横浜シネマリンにて鑑賞
一昨年は独自の「戦後70年」平和映画祭などを企画上映する骨のある劇場なのだ。








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